<今回の背景は、杏奈ですv>


現在・夜八時。

俺は、ぼーーーっとテレビを見ていた。

「兄貴ーーー、お風呂空いたよーーー」

愛来が髪を拭きながらそう言った。

「・・・あぁ」

俺は、間の抜けた返事を返した。

でも、俺は10分が経過しても動かなかった。

・・・まぁ、動きたくなかっただけだけど。

そんな俺の頬を愛来がぎゅーーっとつねった。

「いったたたたたたたたっ!!!」

俺が声を上げると、

「・・・兄貴、いつも以上にアホ面してるねー?何かあったのー?」

愛来がいつもの調子でそう言った。

てか、アホ面ってなんだよ!

「別に」

俺はつねられた頬をさすりながらそう返した。

「・・・言わないともっとつねるよー?」

愛来は、ギロッと俺を睨んだ。

う・・・愛来・・・怖っ!

「・・・・・・・・別れた」

俺は、ボソッとそう溢した。

「きこえなーーい」

愛来は、そう言いながら冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注いだ。

「・・・心亜と別れた!」

俺はヤケクソでそう叫んだ。

愛来は、しばらく目を見開いていた。
そして、牛乳を一気に飲み干してから

「なんでー?」

俺の顔すら見ずに言った。

「なんで・・・って・・・心亜が・・・浮気したから」

俺は、顔を机に伏せて途切れ途切れに言った。

「・・・・証拠はあるのー?」

「ピアスをしてたんだ・・・あいつ・・・大事そうに・・・」

俺は、自分の髪を手でクシャクシャにしながら呟く。
愛来は、牛乳を飲み干した後のコップを流しに置いて

「ばっかじゃないのー?」

と俺の方を見て言った。

「ば、バカってなんだよ!」

俺は顔を上げた。

「バカじゃん。兄貴はココちゃんのこと、何も分かってない」

愛来は、珍しく真面目な顔をして言った。

「・・・・・・なんで・・・・」

俺は、そんな愛来に圧倒されながらそう言った。

「ココちゃんは・・・浮気できるほど、器用な人間じゃないよ」

愛来は、はきはきとした口調で言い切った。
俺は無言で愛来を見ていた。
いや、喋れなかった。

「ココちゃんは、優しくて、純粋で・・・だから、浮気なんかしない」

俺は、まだ喋ることが出来ない。
そんな俺を見て

「兄貴・・・兄貴はやっぱりバカだねー」

愛来は、いつもの口調に戻ってそう言った。


愛来・・・・

「とりあえずー、早くお風呂入ってよー。早く入らないとお湯抜いちゃうよー?」

愛来は、自分の部屋に戻りながらそう言った。

「・・・・ぁあ」

俺は、間抜けな声を上げて・・・風呂場へ向かった。


風呂場の洗面台の鏡を見ると・・・心亜とのペアのピアスが光った。


「・・・っ」

俺は、鏡をドンッと一回殴って

「俺・・・どうしたらいいんだよ・・・っ」


と呟いた。