現在8時15分。

私、藍原心亜(あいはらここあ)は、すっごい勢いで部屋を飛び出した。


「心亜!ご飯は!?」


飛び出した私に、母さんの妹(現在両親は仕事で海外にいる)の松岡綾(まつおかあや)さんが大声を出した。


「えー、いらなーーい!綾さん食べていいよー!」


「綾さんじゃない!姫って呼んでっていつも言ってるじゃないーっ!」


綾さ・・・じゃない・・・姫は、そう言ってお玉を私に投げてきた。


「ごっめーーーんっ」


私は、そう言いながら、姫が投げたお玉を華麗に避けて玄関へ走った。

ローファーを履いて、


「んじゃ、行ってきまーーーっすv」


私は、満面の笑みで家を飛び出した。

それから、空を見上げる。


「・・・今日もすっごいいい天気!」


私は、そう呟いて隣の家まで走った。


ピーーンポーーーン!


呼び鈴を押してしばらくすると


「心亜っちゃーーーんっv」


と、すごい勢いで日向有紀(ひゅうがゆき)が家から飛び出てきた。


「おっはーv」


私は、片手を上げて微笑んだ。


「心亜ちゃんは、今日も超可愛いねーv」


ニコニコしながら言う有紀くん。

とその瞬間、家から出てきた杏ちゃんに有紀くんは、頭をグーパンされた。


「ってめーは、本当に懲りねぇやつだな!この馬鹿有紀が!!!」


杏ちゃんは、そう有紀くんに言うと、私に向き直った。


「心亜、大丈夫か?」


「うん、私は大丈夫v・・・だけど、有紀くんが・・・」


私は、頭を抑えて座り込んでいる有紀くんを見て言った。


「あぁ、あの馬鹿のことは気にすんな。」


そう二カッと笑って言った。


「朝からうるさいんだけど・・・頭痛いから早く行かない?」


真樹兄がこめかみを押さえて歩いてきた。


「ごめんごめん、じゃあ、行こっか!」


私がそう言うと同時に、ブブブブブと携帯のバイブ音が鳴り響いた。


「あ、私の・・・みんな先行ってていいよv」


真樹兄は座り込んでいる有紀くんを連れて、杏ちゃんは私を少し気にしながら歩いて行った。


電話に出ると、


「・・・後ろ見て」


と大好きな私の彼氏の大槻俊(おおつきしゅん)の声がした。


私は、俊の言うとおり、後ろを見た。


「・・・俊!」


私は、後ろにいる俊の元へ走って行った。


「ココちゃんおはよー」


俊の妹の大槻愛来(おおつきあいら)ちゃんが、私にあいさつした。


「うんvおはよーーーv」


私も、愛来ちゃんにあいさつを返す。


「じゃ、ココちゃんにも会えたしー、ウチお邪魔虫だしー、先行くねー」


愛来ちゃんは、そう言って先に歩いて行った。


・・・行っちゃった。全然いいのに・・・


私と俊の間に少し沈黙が流れる。


「・・・えーと、じゃあ行・・・」


私が言い終わる前に、俊は私の手を取って


「・・・今日、一緒に帰らねぇ?」


と赤くなりながら言った。

私も赤くなって、小さく頷いた。



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「心亜なんか今日変ー!」


5限目の授業中に、アキ(明菜)が小声でそう言った。


「そうかなーーーぁ?」


私は、満面の笑みでそう返した。


・・・だって、今日俊と一緒に帰るんだもーーんv


私は、心の中で自慢して黒板に向き直った。




キーンコーン・・・・


授業の終わりを知らせるチャイムが鳴ると同時に、私は走って教室を飛び出した。


「藍原ーーーっ!まだ授業終わってないぞーーーっ!!!」


先生の声に「ごめーんなさーい!!」と謝って廊下を走った。


すると・・・・ドンッ!!!と誰かとぶつかった。


「・・・・なるちゃん!!!??」


「藍原・・・てめぇ・・・」


担任のなるちゃん(成石先生)だった。


「藍原、今から職員室来い!」


「今日は無理っ!明日行くからーーー!!」


私は、なるちゃんを振り切って、走って七組へ向かった。




「俊ーーーーっ!!」


教室に入ると同時に叫ぶ私。


「うるせーーよ!」


俊は、そう言って鞄を持って私の方へ歩いてきた。


「んじゃ、そーゆーことだから、またな真樹」


右手をヒラヒラさせながら、俊は言った。


「真樹兄、また明日ねーーーv」


私も、真樹兄に手を振った。


「・・・恥ずかしい奴ら。」


真樹兄は、眼鏡をくいっと持ち上げてそう呟いた。




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「明日何の日か分かるー?」


「・・・」


無言の俊。


「俊ー!俊ってばー!」


「うっせーなー、聞こえてるっつの」


「じゃあ、何か反応してよー!」


ぷぅと頬を膨らませる私。


そんな私を見て軽く笑う俊。


「あ!!笑ったー!バカーッ!!」


私が俊を指差して言うと、


「だって、さっきの顔・・・!ぷっ・・」


「ひっどーーーい!!!俊のバカバカバカバカーーー!!」


「バカってなんだよ!バカって言うヤツがバカなんだよ、バーカ!!」


「俊もバカって言ったー!バカだー!」


「うっせー!バーーーーカ!」


その後、2人で笑いあった。


「・・・あ、家着いちゃった」


私が残念そうに言うと、


「・・・ぷ、そんなに嫌か、俺と別れるの」


俊が小さく笑いながらそう言った。


「だってー!!!」


私が口を尖がらせて言うと、


「明日会えるだろ、バーカ」


と俊が笑って言った。


「・・・・バカっ」


私は、顔を伏せてそう言った。


「・・・また明日な」


俊は、そう言って歩いて行った。


・・・・バカ・・・俊のバカ・・・ 明日・・・明日は・・・・私達の・・・



ブブブブブ・・・と私の携帯のバイブ音が鳴り響いた。


「あ、メール?」


私は、そう呟いて携帯を開ける。



メールは、俊からだった。


メールを読んだ私は、軽く泣きそうになった。



『明日で、俺ら付き合って一ヶ月だよな。 明日も一緒に登校しねぇ?』




私は、素早く『うん!!』と打ってメールを送信した。